インスタグラマーが立ち上げるアパレル商品のからくりとは?アパレルを始めたい方向けのステップも解説

ここ数年、「インスタ発ブランド」「○○プロデュースのアパレル」といった言葉をよく見かけるようになりました。
お気に入りのインスタグラマーが新作のワンピースやセットアップを紹介していて、思わずポチった経験がある人も多いはずです。

「本当に全部この人がデザインしているの?」「なんでそんなに次々と新作が出せるの?」「ビジネスとしてどうなっているの?」と考える人もいるでしょう。

本記事では、インスタグラマーがアパレルブランドを始めやすい理由や、実際のビジネスモデルの仕組みを整理して解説します。
そのうえで、「自分もいつかアパレルをやってみたい」と考えている人に向けて、どのようなステップで準備していけばいいのかも具体的に紹介します。

インスタグラマーがアパレルを立ち上げることが増えた理由

インスタグラマー発のアパレルブランドが増えた背景には、いくつかの分かりやすい理由があります。

1つ目は、インスタが「ファッション雑誌の代わり」になったことです。

以前は雑誌やテレビがトレンドの発信源でしたが、今はインスタのコーデ投稿やリール動画から新作アイテムを知る人が増えました。

日常のコーディネートや購入品紹介を通じて、インフルエンサーが自然にスタイリスト兼モデルの役割を担うようになっています。

2つ目は、「誰でもブランドを立ち上げやすい環境」が整ったことです。アパレル業界には、既にある型紙やデザインをベースに色や素材、タグだけ変えて商品を提供してくれるOEMメーカーが数多く存在します。

ゼロから工場を探したり、生産背景を作り込んだりしなくても、ある程度まとまったロットがあれば、比較的スムーズにオリジナルブランド風の商品を作ることができます。
この仕組みがあるからこそ、インスタグラマーが次々と自分のブランドを立ち上げやすくなっているのです。

3つ目は、フォロワーがそのまま「見込み客」になってくれる点です。
すでに日頃からコーディネートをチェックしているフォロワーに対して、「実は自分のブランドを作りました」と伝えれば、初期の集客がしやすくなります。広告費を大きくかけなくても、インスタの投稿・ストーリーズ・ライブ配信だけで販売告知ができるため、一般的な新ブランドよりもスタートダッシュを切りやすいのが特徴です。

このように、発信の場・商品供給の仕組み・顧客との距離感がそろっていることが、インスタグラマーのアパレル進出が増えた大きな理由と言えます。

インスタグラマーのアパレルのカラクリとは?

インスタグラマー発のアパレルブランドと言っても、その中身は1パターンではありません。
実際には「どこまで企画に関わっているのか」「どのような仕組みで商品を作っているのか」「どうやって売上を伸ばしているのか」によって、いくつかのタイプに分かれます。

ここでは、代表的な3つのからくりを整理して見ていきましょう。

  • 自社ブランド・コラボ・名前貸しなど複数パターンが存在
  • インスタグラマー発のアパレルのほとんどがOEM商品
  • 自分自身が広告塔だから広告費がかからない

自社ブランド・コラボ・名前貸しなど複数パターンが存在(テーブル版)

インスタグラマーがアパレルに関わるときは、「自社ブランド」「コラボ商品」「名前貸しに近い案件」など、いくつかのパターンがあります。
関与度やリスクの大きさが全く違うので、まずは次の比較表で全体像を押さえておきましょう。

パターンインスタグラマーの関与度企業側の役割メリットリスク・注意点
自社ブランドコンセプト設計、企画、デザイン、プロモーションまで深く関与・生産管理、OEM手配、在庫管理、EC運営などをサポート・世界観をフルで表現できる

・ブランド資産が自分に残る

・在庫リスク・資金負担が大きい

・売れない場合のダメージも直撃する

コラボ商品既存ブランドの商品企画の一部を監修(色・丈・ディテールなど)+モデルとして出演生産背景・販売チャネルを持ち、コラボラインとして展開・低リスクで「プロデュース商品」を出せる

・ブランド側のファンにも届く

・関与できる範囲は限定的

・売れ行きへの責任や裁量はそこまで大きくない

名前貸し案件(監修・プロデュース名義)実質はプロモーション中心で、企画・生産への関与はごく一部か最小限商品企画・生産・価格設定をほぼすべて担当し、インフルエンサーの名前を看板として使う・手間が少なくギャラを得やすい

・短期間で多くの案件をこなせる

・実物の品質をコントロールしづらい

・トラブル時に「この人のブランド」として炎上するリスク

 

例えば愛沢えみりさんのアパレル会社「EmiriaWiz」は、自社ブランドの形態。
デザインから販売、PRまですべて愛沢えみりさんが代表取締役を務める「株式会社voyage」で行なっています。

 

また、「しまむら」が実施した『プチプラのあや』さんとのキャンペーンはが「コラボ商品」の代表例です。

既存ブランド側が生産や販売チャネルをもち、インフルエンサーはデザインの監修、モデルのみを務めています。

 

最後に名前貸しの代表例は、ドレスブランドの「G&R」です。

GACKTさんやROLANDさんが『プロデュース』したと言われていましたが、実質的には広告塔としての名前貸しであったことを、後からローランドさんが発信しています。

インスタグラマー発のアパレルのほとんどがOEM商品

インスタグラマー発アパレルのからくりの中でも、特に重要なのが「OEM」の存在です。
OEMとは、既に生産体制や型紙を持っているメーカーが、依頼を受けて別ブランド向けに商品を作る仕組みのことです。

多くの場合、完全にゼロからオリジナル商品を作るのではなく、既存の型をベースに生地や色、ボタン、丈感などを調整し、ブランドタグやネームを付け替える形で商品を作ります。
これにより、生産側は効率良くロットを確保でき、インスタグラマー側は初期コストを抑えながら「オリジナル風」のアイテムを展開できます。

もちろん、中にはパターンから徹底的に作り込んでいるブランドもありますが、多くのインフルエンサーブランドは、スピード感や価格帯を優先するためにOEMを積極的に活用しています。
シーズンごとに新作を複数型出せるのも、こうした既存の仕組みがあるからこそです。

自分自身が広告塔だから広告費がかからない

インスタグラマーがアパレルビジネスと相性が良い一番の理由は、「自分自身が広告塔になれる」点です。
通常、新しいブランドを立ち上げる場合、認知度を上げるために広告費やPR費用が大きくかかります。
テレビCMや雑誌広告、インフルエンサーへのPR依頼など、初期段階で数百万円単位のコストが発生することも珍しくありません。

しかし、インスタグラマーはすでにフォロワーという「見てくれる人」を抱えています。
新作の告知も、ストーリーズや投稿、ライブ配信を使って、自分のアカウント上で完結させることができます。
つまり、広告費をほとんどかけずに集客と販売促進ができるという、大きな強みを持っているのです。

アパレルで稼げるインスタグラマーになるには?

インスタグラマー発のアパレルの仕組みを理解すると、「自分も将来アパレルをやってみたい」と考える人も出てきます。
ただし、ブランドを立ち上げれば自動的に売れるわけではなく、「フォロワーの質」「発信内容」「実績づくり」など、準備しておくべきポイントがいくつかあります。

ここでは、アパレルで稼げるインスタグラマーを目指す際に、具体的に意識したいステップを整理して紹介します。

  • まずは見込み客になるフォロワーを増やす
  • ファッションジャンルと世界観を明確にする
  • アパレル案件につながるPRや発信を積極的におこなう
  • ブランドやコラボ企画を見据えて実績を積み上げる

まずは見込み客になるフォロワーを増やす

アパレルで稼げるインスタグラマーを目指すなら、最初に意識すべきなのは「フォロワー数」よりも「見込み客になるフォロワー」を増やすことです。
単に数が多いだけでなく、実際にファッションにお金を使う層がどれだけいるかが重要になります。

そのためには、日常の写真を何となくアップするのではなく、「コーディネート」「アイテム紹介」「着回し例」など、ファッションに関する投稿の比率を高めることが有効です。
どんなブランドをよく買っているのか、どの価格帯が多いのかなども伝えていくと、自分と感覚の近いフォロワーが集まりやすくなります。

また、フォロワーとのコミュニケーションも大切です。
コメントやDMの質問に丁寧に返信したり、アンケート機能を使って「どんなアイテムが気になるか」「どんな悩みがあるか」を聞いたりすることで、フォロワーのニーズを把握できます。
この積み重ねが、将来アパレルを始めたときの「最初の顧客基盤」につながります。

ファッションジャンルと世界観を明確にする

アパレルで稼げるインスタグラマーは、自分のファッションジャンルと世界観がはっきりしています。
カジュアル、フェミニン、ストリート、韓国系、シンプルベーシックなど、「この人=この系統」とイメージできることが重要です。

投稿するコーディネートのテイストがバラバラだと、フォロワーは「結局どんなファッションが得意なのか」が分かりにくくなります。
逆に、色味やシルエット、写真の雰囲気をある程度そろえることで、アカウント全体の世界観が統一され、ブランド側からも「このジャンルのファッションに強い人」と認識されやすくなります。

プロフィール文やハイライトも世界観づくりの一部です。
扱うテイスト(例:大人カジュアル/プチプラ中心/低身長コーデなど)、どんな人に向けた発信かを明確に書いておくと、フォローするか迷っている人の背中を押しやすくなります。

世界観が定まっているアカウントは、アパレル企業から見ても「この層に届けたいときにお願いしたい人」として声がかかりやすくなります。

アパレル案件につながるPRや発信を積極的におこなう

アパレルと組んで仕事をしたいのであれば、日頃の発信内容も「アパレル側から見たときに声をかけやすいか」という視点で整えていく必要があります。

  • 全身が分かるコーデ写真を定期的に投稿する
  • ブランド名やアイテム名をキャプションやタグで明記する
  • サイズ感や着心地、素材感など、購入時に気になる情報を丁寧に書く

すでに自分で購入したアイテムについて、半分レビューのような形で感想を発信しておくと、「この人は紹介の仕方が上手い」「購入につながりやすい説明ができる」と判断してもらいやすくなります。

初期は無償であっても、ブランドにとってメリットのあるPR投稿を積み重ねることで、やがてタイアップやPR案件につながる可能性があります。

ブランドやコラボ企画を見据えて実績を積み上げる

最終的に自分のブランドを立ち上げたい、コラボ商品を出したいと考えているなら、その前段階として「売れる実績」を積み上げることが欠かせません。

例えば、アフィリエイトリンクや紹介コードを使ったPR案件などで、「この人が紹介するとどれくらい売れるのか」という数字的な結果を出しておくことは大きな武器になります。
ブランド側はリスクを抑えてコラボや立ち上げを検討したいので、過去の実績は重要な判断材料です。

  • また、フォロワーからの反応も実績の一部です。
  • 新作アイテム紹介への反響
  • 「真似しました」「買いました」といった報告
  • ライブ配信でのリアルタイムな購入アクション

こうした反応を積み重ねることで、「この人のフォロワーは実際に行動してくれる」という証拠になります。

まとめ

インスタグラマーが立ち上げるアパレルには、自社ブランドやコラボ、名前貸しに近い案件など複数のパターンがあり、多くはOEMを活用しながら、自分自身を広告塔として売上をつくるビジネスモデルで動いています。

将来アパレルを始めたい人にとっても、フォロワーとの関係づくりや世界観の確立、PR実績の積み上げなど、事前にやるべき準備がはっきり見えてきます。仕組みを理解したうえで、自分にとって納得できる距離感でインスタ発アパレルと付き合っていくことが大切です。